日本の食卓には欠かせない存在、さつまいも。特に安納芋などのねっとりタイプが大人気で、それをきっかけに様々な新品種が生み出されています。食物繊維が豊富で、日本人の食生活で不足しがちな栄養素を補うことができるため、健康維持にも最適な食品とされています。
さつまいもには、大きく分けてホクホクした食感、しっとりした口当たり、ねっとりとした濃厚な味わいの3つのタイプがあります。子供の頃に味わった焼き芋がホクホクタイプだったと思い返しながら、今では様々な種類のさつまいもが焼き芋屋さんで見られるのを目の当たりにすると、その変化には本当に驚かされます。
実はさつまいもには20種類以上の品種があることがわかっています。この記事では、その中から特に注目の22品種をピックアップし、それぞれの特徴を細かくご紹介します。各さつまいもが持つ独特の風味や食感、健康へのメリットなど、多方面からその魅力を深掘りしていきましょう。
さつまいもとはどんな野菜?
学名はIpomoea batatasで、別名を甘藷とも呼ばれるヒルガオ科の野菜です。原産地は中央アメリカになります。
1600年頃、中国から日本へと伝わったさつまいもは、琉球王国(現在の沖縄県)から薩摩(現在の鹿児島県)へ広がり、「さつまいも」という名前がつけられました。中国での呼称「甘藷」を由来として、一部地域では「かんしょ」とも呼ばれています。日本全国への普及は、8代将軍徳川吉宗の時代に蘭学者青木昆陽によって推進されました。特に、川越市はさつまいもの主要な産地で、「十三里」と呼ばれる焼き芋屋が有名でした。
外国語では、英語で「sweet potato」、フランス語で「patate」、中国語で「红薯」と表現されます。さつまいもの糖度は品種によって異なり、10度前後から60度以上になるものもあります。「紅はるか」や「安納芋」などの品種は、麦芽糖を多く含むため、自然な甘さを楽しめます。
さつまいもの旬の時期はいつ?
さつまいもは、10月から1月が旬の時期です。収穫後2〜3か月間貯蔵して余計な水分を取り除くことで、甘みが増します。そのため、収穫期の10月以降、しばらく経った頃が最も美味しい時期とされています。
さつまいもの全国生産量ランキング
さつまいもは鹿児島県が全国生産量のトップです。特に「安納芋」や「紅薩摩」などの有名な品種が多く生産されています。さつまいもの全国生産量ランキングは以下の通りです。
第1位: 鹿児島県 32万2800トン(37.5%)
第2位: 茨城県 17万2000トン(20.0%)
第3位: 千葉県 10万3500トン(12.0%)
第4位: 宮崎県 9万2300トン(10.7%)
第5位: 徳島県 2万8600トン(3.3%)
茨城県や千葉県も生産量が多く、宮崎県では「宮崎紅」や「宮崎蜜芋」、徳島県では「鳴門金時」が特に知られています。ビタミンや食物繊維が豊富で、健康食品としても注目されています。焼き芋や蒸し芋、スイートポテトなど、さまざまな料理に使われるさつまいもは、日本の食文化に深く根付いています。
さつまいも3種類22品種を詳しくご紹介
さつまいもは、その食感や味わいによって大きく3つの種類に分けられます。それは、しっとり系、ほくほく系、そしてねっとり系です。この度は、それぞれの種類から選ばれた代表的な22品種を詳しくご紹介します。さつまいもファンの皆さんには、きっと参考になる情報です。
さらに、このページでは、さつまいも22品種のランキングも掲載していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
【しっとり系さつまいも5品種】
しっとり系のさつまいもは、適度な甘さとなめらかな喉越しが魅力で、まるで芋ようかんを味わっているような感覚が楽しめます。このグループには以下の5品種があります。
紅まさり: 程よい甘さと滑らかな食感が特徴です。
シルクスイート: 名前の通り、絹のような滑らかさが魅力的です。
めんげ芋: しっとりとしており、甘さが際立つ品種です。
ひめあやか: 甘みが強く、しっとりとした口当たりが楽しめます。
アメリカ芋: 滑らかな食感と甘みが特徴の一つです。
【ほくほく系さつまいも10品種】
ほくほく系のさつまいもは、昔懐かしい焼き芋のように水分が少なく、サラッとした粉質の舌触りが特徴。洗練された甘さが味わえるこのタイプには、以下の10品種が属しています。
紅あずま: 水分が少なく、ほくほくした食感が特徴です。
紅こまち: 粉質の舌触りと上品な甘さが魅力的です。
パープルスイートロード: 美しい紫色と甘さが特徴の品種です。
紅こがね: しっかりとした甘さとほくほくとした食感が楽しめます。
鳴門金時: 甘さが強く、ほくほくとした食感が特徴的です。
紅さつま: 粉質の舌触りと濃厚な甘さが魅力です。
とみつ金時: しっかりとした甘さとほくほく感が堪能できます。
宮崎紅: 甘さと粉質の舌触りが特徴的です。
五郎島金時: 上品な甘さとほくほくした食感が魅力的です。
高系14号: 多くの派生品種が存在し、甘さと粉質の舌触りが特徴です。
【ねっとり系さつまいも7品種】
ねっとり系のさつまいもは、スプーンで食べられるほどクリーミーな食感と濃厚な甘みが特徴です。このタイプには以下の7品種があります。
安納芋: クリーミーな食感と濃厚な甘さが魅力です。
紅はるか: 甘さが強く、ねっとりとした食感が特徴です。
紅天使: クリーミーな口当たりと濃厚な甘さが楽しめます。
甘太くん: 名前の通り、甘さが強く、ねっとりとした食感が特徴です。
いもジェンヌ: クリーミーで濃厚な甘さが魅力的です。
紅優甘: ねっとりとした食感と甘さが特徴的です。
クイックスイート: クリーミーな口当たりと濃厚な甘さが楽しめます。
以上のように、さつまいもにはそれぞれ異なる魅力がありますので、しっとり系、ほくほく系、ねっとり系から自分の好みに合った品種を見つけ、その美味しさをぜひ堪能してください。
さつまいもの栄養について
さつまいもは栄養価が高く、「スーパーフード」としても知られています。特に、食物繊維が豊富に含まれており、ジャガイモと比較すると約2倍の量を誇ります。この食物繊維は腸内環境を整える効果があり、便秘解消にも役立ちます。また、ビタミンCやポリフェノールも豊富で、これらが免疫力向上に寄与することが期待されています。そのため、健康維持に非常に役立つ食品として注目されています。
さつまいもの栄養成分(100gあたり)は以下の通りです。
エネルギー:132kcal
水分:66.1g
炭水化物:1.2g
無機質:31.5g
ナトリウム:4mg
カリウム:470mg
カルシウム:40mg
鉄:0.7mg
銅:0.18mg
マンガン:0.44mg
ビタミンE:1.6mg
ビタミンB1:0.11mg
ビタミンC:29mg
食物繊維:2.3g
さつまいもによる健康効果には、高血圧やむくみの予防、がん予防、免疫力の強化、美肌効果、ダイエットサポート、血糖値の急上昇を抑える効果などがあります。詳細は、この記事をご参照ください。
さつまいもの保管テクニック
さつまいもは季節の変わり目に特においしい食材です。秋には子供たちとお芋掘りを楽しんだり、近所からのお裾分けを受けることもありますが、予想以上にたくさん手に入ることもあります。そんな時に役立つのが、さつまいもの適切な保存方法です。
さつまいもを長持ちさせる保存方法は、冷凍、冷蔵、常温保存の3つに分かれています。
冷凍保存では、約1か月保存が可能です。
冷蔵保存では、約2か月保存できます。
常温保存では、約1か月が目安です。
一般的には、さつまいもは常温での保存が推奨されています。これは、質感や風味を良好な状態で保つことができるためです。また、焼き芋として加工した後の保存方法についても、適切な手順を知っておくことが大切です。
まとめ
さつまいも、この素晴らしい食材が持つ豊富な栄養素は広く知られています。秋が深まり冬の冷たさが身にしみる季節には、その風味が一層豊かになり、多くの人々から愛されるようになります。
近年、焼き芋専門の店が続々と開かれ、かつては限られた地域でしか楽しめなかったこの味を、現在では多くの人が気軽に楽しめるようになりました。この動きは、さつまいもの魅力をより広範囲に伝える絶好の機会となっています。
さつまいもには様々な種類があり、それぞれが独特の風味と特性を持っています。甘さ、食感、色合いに至るまで、さつまいもの世界は実に多彩です。この多様性から、自分にとって最適なさつまいもを見つけることは、まるで味覚の冒険と言えるでしょう。
寒い季節には特に、シンプルながら心を温める焼き芋が重宝されます。自宅でじっくり焼くもよし、専門店で職人の技を堪能するもよし、その楽しみ方には様々あります。さらに、さつまいもはそのまま食べるだけでなく、多様な料理の材料としても優れており、日々の食卓を彩ります。
専門店では、焼き加減や種類にこだわったさつまいもを楽しむことができます。そこでは、さつまいも本来の味わいを最大限に引き出すための工夫がされています。冷えた日には、ほくほくの焼き芋を手に取り、温かさと幸せを感じられるでしょう。
さつまいもを探求する旅は、新しい味を追い求めるだけではなく、食文化の深さを学び、人々とのつながりを深める機会ともなります。さつまいも一つにも、多くの物語があり、それを共有することで、より豊かな食体験が得られます。
この機会にさつまいもの魅力を再発見し、自分にとって最も合うさつまいもを見つけてみてください。選ぶさつまいもがどれであれ、その選択があなたの日常に新たな色を添え、心を温かくしてくれるはずです。